それを愛と呼ぶのなら
およそ20分後。少しサイズの合っていないスウェットを着た真尋が、リビングに戻ってきた。


「やっぱり小さかったか」

「着れてるし大丈夫だろ」


お風呂に入る前と同じようにタオルを頭に被せて、真尋は私の前に立つ。

さっき抱きついた時も思ったけど……


「真尋って、身長いくつ?」

「……何、突然」


こうして並んでみると、頭ひとつ分くらいの差はある。

クラスの男子の中でも、ここまで見上げるのはバスケ部の子くらいだ。


「……178か9」

「やっぱり高いんだ。私も一応163あるんだけど、それでも結構差があるから、どれくらいなのかなーって気になったの」


私の言葉を聞いた真尋は、少し傷ついた顔をした後、何でもなかったかのように私から目を逸らした。

お互い、特に合図をするわけでもなく、自然にソファーへと移動する。

テレビも何もついていない。ただ、雨音だけが響くこの空間が、妙に心地よかった。


「……父親は」


少しの沈黙の後、真尋が会話を切り出した。

その質問に、私はへらっと笑ってみせる。


「今日も遅いって……さっき、お母さんが電話で言ってた」

「……」
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