それを愛と呼ぶのなら
何よ、それ……。


「それじゃあ、真尋は……っ」

「いいんだよ、俺のことは。お前が幸せならハッピーエンドだろ」


立ち上がった真尋は部屋を見渡した後、ゆっくりと深い息を吐く。

そして、キャリーケースを手に持った。


やだよ。行かないで。

あんたが私を守ってくれるなら、私があんたを守るから。


たった10歳だった真尋に、残酷な真実はどれだけ重かっただろう。

ずっと、ひとりで背負ってきてくれたんだね。

もうひとりで抱え込まなくていいよ。

ふたりで一緒に乗り越えていこうよ。


最後の希望を込めて、真尋に手を伸ばそうとするけれど。

──パシッ……。

その手は、真尋の手によって振り払われてしまった。
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