それを愛と呼ぶのなら
やだ。やだよ。

行かないで。ここにいて。


どうして声、出てくれないの。

どうして、立ち上がるための足は動いてくれないの。


涙が、部屋を出ていこうとする真尋の姿を隠してしまう。

これが最後だなんて……。


「さよなら、葵」


バタン、と。

滲む世界の中で、扉が閉まる音だけが残酷に響いた。


「まひ……真尋……っ!」


……いつから?

一体、いつから私と離れることを決めていたんだろう。

一体、どんな気持ちで、同じ父親を持つ私と一緒にいたんだろう。


考えるのは人のことばっかりで、真尋は最後まで、本当の自分を見せてはくれなかった。


「真尋──ッ!」




逃亡生活、最終日。

私達が定めた1週間というタイムリミットに訪れたのは、当初予定していた死ではなく……涙で濡れた別れだった。




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