それを愛と呼ぶのなら

終章

「降谷さーん!取引先からお電話ですー!」

「はーい!」

「葵ちゃん、今度の企画の資料どこにあったっけ?」

「あ、後で取ってきますー!」


──あれから、10年。

私は今、どっぷりと現実の中にいる。




「今日も疲れましたねぇー」


終業後、ドリップしたてのコーヒーを片手にドサッと椅子にかけた私に、後輩の妃名子が声をかける。


「ほんと。肩凝るわー」

「葵さんってば仕事できるから、みんな頼りっぱなしで……」

「いやいや、そんなことないよ。目の前のことを必死にやってるだけ」


湯気の立つコーヒーを呷る。

コーヒーは相変わらずブラックだ。


「ほんとかっこいいですよねぇ、葵さん。仕事できて、おまけに美人で!他の部署でも大人気ですよー」
< 152 / 165 >

この作品をシェア

pagetop