それを愛と呼ぶのなら
「褒めても何も出ないわよ?」


ケラケラ笑う私とは対照的に、妃名子は目を輝かせたまま。

こんな風に慕ってくれる人がいて、悪い気はしない。


「今28でしたよね?結婚とか考えてないんですかぁ?」

「あんた……他の人が遠慮して触れてこないところを、ストレートに素手で来るのね」


そこがあんたのいいところでもあるけど、というのは言わないでおく。

コーヒーが入ったコップをデスクに起き、天井を見上げた。

肩につかないほど短くなった髪が、頬を撫でる。


「結婚とか、あんまり興味ないの。ありがたいことに仕事で忙しくさせてもらってるし、今のままでいいかなーって」

「仕事に生きるってことですか」


首を傾げる彼女に頷いてみせる。

それで納得したかと思いきや、レモンティーが入ったコップを両手で包み込んだ妃名子が、再び口を開いた。
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