それを愛と呼ぶのなら
「……うん」

「目の前のもの全てが信じられなくなって、息をすることすら馬鹿らしくなって」

「……」

「全てを棄てたいって……時々思う」


真尋の言葉を聞いて、身体中に電気が走ったような気がした。


きっと私達は似ている。

愛なんて知らない、渇ききった心。私と真尋……ふたりのそれが、共鳴したんだと思う。


「じゃあいっそ、ふたりで消えてしまおうか」


君の言う通り、全てを棄てて。

裏切った代償に、狂ったこの世界から消してやるんだ。


「……悪くない」


伸ばされた手を取ることに、迷いなんてなかった。未練なんてこれっぽっちもなかったの。

この手のひら以外、何もいらない。何も信じない。

今この瞬間、私は決意を固めた。



一つひとつゆっくりと、でも確実に“今”が壊れていく音がした──雨が降る夜のことだった。



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