それを愛と呼ぶのなら
「飛行機だと1時間やそこらで着くぞ」

「飛行機で行ったことあるの?」

「……昔な」


昔、かぁ……。

真尋の幼少期はどんな感じだったんだろう。

付き合いが長いわけでもない、ましてや特別仲がいいわけでもない私には、想像すら出来ないけど。


改札を通り抜けると、ちょうど電車の到着を知らせるアナウンスがホームに流れた。


「新幹線なんて、中学の修学旅行以来よ」

「……俺も似たようなもん」

「あんな親じゃ家族旅行なんて行かないしね」


自虐的な言葉を笑って言ってのけると、真尋はキャリーケースを引く手とは逆の手のひらで、私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。

触れたところから伝わる温もりが強張った私の心を少しだけ解いてくれたのは、内緒。


『18番ホームに──』


アナウンスと共にやってきた博多行きの新幹線に、私達は揃って乗り込んだ。




高校1年生の春から始めたスーパーのバイトは、先週で辞めた。

学校のロッカーに置いていた教科書やノートだって、誰にも気付かれないように全て持ち帰ったし、家にある私のものも可能な限りはゴミ袋に突っ込んだ。
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