それを愛と呼ぶのなら
「無理ね」

「だろ?……お前は?」

「うーん、スーパーはそこまで愛想よくしなくても大丈夫だからなぁ。私もカフェとかファミレスとかだったら多分駄目」


知らない道を歩きながら、何でもない話に花を咲かす。

マンションが前方に見えてきても、それが止まることはなかった。




部屋に戻り、先に買ってきた食材を冷蔵庫に入れる。

何か手伝う?という真尋の申し入れは、有り難くもふたりが並んで作業するにはキッチンが狭いため、断った。


「じゃあ先に風呂洗ってくる」

「ありがと」


お風呂場へ向かう真尋を見送り、料理に取り掛かった。

ホイコーローなんて普段作らないから、ケータイに表示されるレシピ片手に調味料を加えていく。


料理をするのは嫌いじゃない。

基本的には専業主婦だったお母さんが作っていたけど、不在の時は自分で作ってたし、味もそこそこ。

だけど、家に人を招き入れることがなかったから、それらを誰か他の人に食べてもらう機会は生まれなかった。


「……」


真尋はどんな反応をするかな。何か言ってくれるかな。それとも、変わらず無愛想に食べるだけ?

色んなパターンを予想をして──初めて自分が、胸を躍らせていることに気付く。
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