それを愛と呼ぶのなら
ここを出て行くことに、寂しさなんてないんだから。
キャリーバッグを手に家を出た私の心は晴れやかで、いつもはうざったい太陽の光も今日は然程気にならなくて。
歩き慣れた道を踏みしめる足は軽く、約束の東京駅まではあっという間だった。
新幹線に乗って大阪に来て、街の雰囲気や何もかもが東京とは違って。
慣れないことばっかりの1日だったけど、悪くなかった。
疲れたけど、嫌な疲れじゃないんだもの。
それってきっと、楽しかったってことでしょう?
「……今日みたいな明日だったらいいな」
もはや寝言のようなか細い声が、湯気の立ち込める浴室に響いた。
スウェットに着替えた私は、眠気と闘いながら真尋の元へと戻った。
「お風呂、ありがと……」
「ん。……って、眠いのか?」
「……ん」
重い瞼を擦りながら、真尋の前に立つ。
すると真尋は、ふっと笑って私の頭に手を乗せた。
「電気消して、今日はもう寝ろ。歯磨いた?」
「……ん」
「よし」
はっきりとしない意識の中、手のひらにぬくもりを感じる。そのまま手を引かれ、ベッドまで連れられた。
「おやすみ、葵」
そう言って離された手。パチン、という音と共に消された電気に、真尋の気配が少し遠くなった気がした。
おやすみ……おやすみかぁ。
いつぶりに言われたかなぁ。
「おやすみ……まひ……ろ」
ベッドに体を預けた刹那、私の意識は完全に途切れた。
キャリーバッグを手に家を出た私の心は晴れやかで、いつもはうざったい太陽の光も今日は然程気にならなくて。
歩き慣れた道を踏みしめる足は軽く、約束の東京駅まではあっという間だった。
新幹線に乗って大阪に来て、街の雰囲気や何もかもが東京とは違って。
慣れないことばっかりの1日だったけど、悪くなかった。
疲れたけど、嫌な疲れじゃないんだもの。
それってきっと、楽しかったってことでしょう?
「……今日みたいな明日だったらいいな」
もはや寝言のようなか細い声が、湯気の立ち込める浴室に響いた。
スウェットに着替えた私は、眠気と闘いながら真尋の元へと戻った。
「お風呂、ありがと……」
「ん。……って、眠いのか?」
「……ん」
重い瞼を擦りながら、真尋の前に立つ。
すると真尋は、ふっと笑って私の頭に手を乗せた。
「電気消して、今日はもう寝ろ。歯磨いた?」
「……ん」
「よし」
はっきりとしない意識の中、手のひらにぬくもりを感じる。そのまま手を引かれ、ベッドまで連れられた。
「おやすみ、葵」
そう言って離された手。パチン、という音と共に消された電気に、真尋の気配が少し遠くなった気がした。
おやすみ……おやすみかぁ。
いつぶりに言われたかなぁ。
「おやすみ……まひ……ろ」
ベッドに体を預けた刹那、私の意識は完全に途切れた。