それを愛と呼ぶのなら
溜め息混じりの言葉が、私の胸に次々と突き刺さる。


『いい大人が不倫なんてダセーことしてんじゃねーよ』


この人は誰?

この人は……何を言ってるの?


「不倫って……お母さんが……ですか……?」

『……!?』


口に出してみて初めて、自分の声が、足が、指先が震えていることに気付く。


『お母さんって……あんた、もしかして……』

「私は……降谷美弥子の……娘の……葵です」


声が巧く出てこなくて途切れ途切れになってしまった私の言葉を聞いた電話の向こうの人が、まじかよ、と小さく呟いた。


『……俺は、このケータイの持ち主、都築嶺二の息子の真尋。親父が戻ってきたらまずいから、ひとまずあんたのケー番教えて』

「え……あぁ、はい」


あまりに突然の出来事に巧く情報を処理出来ずに、言われるまま電話番号を口にする。

電話の向こうの真尋と名乗ったその人は、すぐに掛け直す、と言って早々に電話を切った。
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