それを愛と呼ぶのなら
自分で選んで、真尋の横に並んで。

自分で選んで、大阪に来た。


「……間違いなんてひとつもないわよね」


体を完全に真尋の方に向けて、彼の髪を梳く。

寝顔は少しだけ幼い。


「……」


閉めたカーテンの隙間から、一瞬、光が差し込んでくる。

少しして、どこか遠くの方でお腹の底に響くような雷鳴が聞こえた。


……何が快晴よ。


再び光を放った夜空を睨みつける。

神様はどこまでも私達を嫌うらしい。


「……」


はぁ、と息を吐いて、再び目を閉じる。

疲れているのか、意識はすぐに遠のいた。




朝、先に起きていたのは真尋の方だった。

部屋に漂うのは、パンの焼ける美味しそうな芳ばしい香り。


「はよ」

「おはよ……て、何してんの?」

「朝飯作ってる」


ボサボサの髪を気にすることなく呆気にとられている私を横目に見ることもせず、真尋は慣れた手つきでフライパンを揺らした。


「ご飯は私の担当じゃなかった?」

「別にいいだろ、腹減ってたんだから」

「それはそうだけど……」
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