それを愛と呼ぶのなら
何となく、申し訳ない。


「スクランブルエッグとかソーセージとかそんなんだけど。食える?」

「……食える」


のそりのそりとベッドを出て、真尋の元へと歩いていく。

Tシャツともワンピースとも言えないような丈の服の裾から、私の白すぎる脚が2本、姿を見せていた。


「……巧いのね、料理」

「お前ほどじゃねーだろ」

「そんなことないわよ。……逆に、あんたに出来ないことなんてあるの?」


私の問いかけに、真尋は寂しそうに目を伏せて口元に笑みを浮かべる。


「……あるよ。数えきれないくらい」

「例えば?」

「……さーな」


真尋は両手にお皿を持って私の横を通り抜けた。

はぐらかした……よね、今。

気にはなるものの、そこに踏み込めるほど私達の距離は近くないんだろう。

だからこそ、この関係が心地いい。


「ほら、食うぞ」

「うん」


ぱっと振り返って、真尋と朝食が待つテーブルへ向かう。

窓の外はやっぱり雨空だった。




ある程度行き先を決めてから、マンションを出た。

行くと決めたのは、通天閣となんば、道頓堀。


「串カツ。串カツ食べたい」

「俺も思ってた。行くか」

「やった」
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