それを愛と呼ぶのなら
こんな言葉で形容するのはらしくないし、あまり得意ではないけれど──相性がいいってのは、こういうことなのかしらね?




なかもず行きの電車に乗り込み、約15分。列車は目的地である動物園前駅に着いた。

ホームに降り立ってから、黄色い案内板に目を通す。通天閣は……1番出口か。

先にそれを読み取った真尋は、振り向くこともせずに、やっぱり先々に足を進めていった。


ケータイでマップを開きながら、そして途中からは建物の隙間から見えたそれを頼りに、雨が打ち付けるアスファルトを蹴る。

側面に書かれた文字がはっきりと目視出来る距離になった時、漸く真尋の目が私を捉えた。


「どうする?」


本当……最低限のことしか言わないんだから、この男は。

それでもちゃんと理解出来る私って、天才かもしれない。……なんてね。


「時間的にお昼にしてもいい頃合いじゃない?」


履いている細身のジーンズの後ろポケットに突っ込んでいたケータイで時間を確認すると、もうすぐ12時30分。

昼食を取るにも申し分ない時間だと言えると思う。
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