それを愛と呼ぶのなら
「そうだな」


再び前に向き直った真尋は、前方に見える列に向けて歩き始めた。


「えっ……ちょ、なんでよりによってそこ……!?」

「あそこが1番有名なんだよ、この辺串カツ屋じゃ。ほら、行くぞ」


だから、コンパスの長さが違うんだってばー!

普段の歩くスピードが速めの私でも、いつも通りじゃ追い付けない。

まぁ真尋もスタスタと歩いていくタイプで、なおかつ今は更に速く足を進めてるからなんだろうけど。

何でもない時は隣に並んで歩幅を合わせてくれるのに、歩き出す時は大抵真尋の方が先で、気が急いてる時は私のことなんて見ずに目的地を目指しちゃうんだ。


そんな真尋、嫌いじゃないよ。

少なくとも、今までのどの男達よりも。……なんて、比べてしまう自分が馬鹿みたいね。


「待ってよ」


カッカッ。履きなれた白いピンヒールを鳴らして真尋の背中に手を伸ばす。けど……高いわね。

靴のおかげでかなり目線は高くなっているのに、身長16センチの差はあまり縮まっているような気がしない。

マンションだと、ヒールがないせいでもっと差を感じる。
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