それを愛と呼ぶのなら
出来ないことは沢山あるなんて本人は言うけれど、端から見たら本当に非の打ち所がない。

まぁ……この性格じゃ、これまでの女の子はついて行くのに苦労したかもしれないけどね。


やっと真尋に肩を並べた時、既に彼の足は止まっていた。


「……本当に並ぶの、これ」

「当たり前だろ。これでも人少ねえ方だよ」


うげ。これ以上長かったら無理よ、私。

列が出来ている時はいつも、早々に諦めていた。


「……美味しいんでしょうね?」

「味は保証する」

「なら、楽しみにしてるわ」


真尋が保証するって言うんだから、きっと間違いない。

待つのは得意じゃないけど、待ってみよう。

最後くらい、自分が今までしてこなかったことを。


「真尋はこのお店に来たことがあるの?」

「……まぁ。昔、一度だけ」

「ふーん。じゃあ、通天閣にも上った?」

「あぁ。あの日は晴れてて、遠くの景色がはっきり見えたのを覚えてる」


昔はハルカスなんてなかったけど、と続けて真尋。

その表情は、遥か遠い記憶を思い浮かべて懐かしんでいるような、だけどどこか寂しそうにも見て取れた。
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