それを愛と呼ぶのなら
「今日は上っても、天気が悪くて遠くなんて見えないでしょうね」

「だろうな。それでも上るか?」

「ううん、いい。雨を目の当たりにしたくないから」


霞んだ景色を見て気分が沈んでしまうのは目に見えてる。

今更かもしれないけど、そんな姿を真尋には晒したくなかった。


「じゃあ、昼飯食べ終わったら、ちょっとだけこの辺りを歩いてなんばに向かおう」

「うん」


真尋の提案に素直に頷く。

この、ちょっと慣れた感じ……もしかして真尋は、この土地に馴染みがあるのかな。

昔来たって言ってたけど……本当にそれだけ?




ソースの二度づけは禁止。そんなルールの中で食べた串カツは絶品だった。

考えるよりも先に美味しいの一言を口にした私に見せた真尋の自慢げな笑顔は、悔しいけど眩しかった。


お店を出て通天閣の周りを散策して、ある程度満足したと思ったタイミングで真尋が移動を告げる。
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