それを愛と呼ぶのなら
偶然か、それとも図ってたのかはわからない。わからないけど、心地いい。

私にはそれだけで十分だった。




それからは、なんば、心斎橋、道頓堀……所謂“ミナミ”と呼ばれる場所を観光した。

普通に、どこにでもいるような男女のように。

目的もなくただ歩いて、気になるお店があれば立ち寄って。誰も私達がここに来た理由なんて気付かないくらい、自然な時間を過ごした。




なんばで夕飯にお好み焼きを食べてマンションに戻った頃には、21時半を回っていた。

真っ暗な部屋の電気を点けると、いきなりの暗転に目が眩んだ。


「お風呂洗ってくるね」

「ん。お茶飲む?」

「飲む」


ショルダーバッグを床に置いて、お風呂場へと向かう。

扉を開けた瞬間私を包んだのは、むわっとした空気だった。


……最悪。換気扇付けるの忘れてた。


昨日は先に真尋がお風呂に入ったので、換気扇のスイッチを入れていなかったのは間違いなく私。

夏場だから暑いのは当たり前なのに……。


はぁ、と深い溜め息を吐きつつ、お風呂の栓を抜く。
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