それを愛と呼ぶのなら
夜の共に選んだのは、去年ヒットしたヒューマンラブストーリー。

運命に翻弄されるふたりが織り成す物語は涙なしには観られない……と、上映していた時期にクラスの子に熱く語られた記憶がある。

私も真尋も、別にラブストーリーに興味があるわけでも、ヒット映画に興味があるわけでもない。

偶然立ち寄った店で偶々プレイヤーが売っていて、何となく映画が観たくなって、何となくそれを購入して、ふらっと入ったレンタルショップで一番に目に付いた。選んだ理由は、ただそれだけ。


プレイヤーは7インチしかなく、あまり離れると画面が見えないために、私達は必然的に距離を詰めることになる。

真尋の隣でいることにも、もう随分慣れた。


『出会った時から、ずっといいなって思ってて。話すようになって、もっと好きになった。こんな俺でよかったら、ずっと傍にいてほしい』

『うん……!いるよ!私、ずっと優の傍にいる!』


秘めた恋心を口にしたヒーローに、涙ながらに思いを伝えるヒロイン。

結ばれたふたりは、演技だとは思えない程幸せそうに笑い合っている。


「……」

「……」


女優ってすごいのね。

好きじゃない相手にも、こんな顔を見せられるんだから。
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