それを愛と呼ぶのなら
数年前に交わした約束が現実になったにも関わらず、複雑な表情を見せるふたり。

再会の言葉も、ぎこちない。


「これ……まだ好きってこと?」

「……嫌い合って別れたんじゃないからな」

「ふーん……」


数十分ぶりの会話。

それからも言葉を交わすことなく、プレイヤーから流れる音と、窓を打つ雨の音だけを聞いていた。


『巡り巡って……やっと辿り着いた』

『もう……離さないから』


学生時代に別れた真相が明るみになって、想いが溢れて、今の幸せを壊してでも傍にいたい……そう言って、画面の中のふたりが同じ道を歩くことを選んだ時も、私達は表情ひとつ変えなかった。


「……女子とかは好きなんだろうね、こういう映画」

「……お前も女子だろ、一応」


エンドロールが流れ、ふたりとも前を向いたまま、漸く口を開く。


「感想は?」

「“おもしろくない”」

「ズバッと言うな」


クッ、と喉を鳴らした真尋の肩に凭れ掛かる。

見た目よりもずっとがっしりとしたその温もりに、私はそっと目を瞑った。


「“愛”って、なんだろ?」

「……どうした、急に」
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