それを愛と呼ぶのなら
「わかんないのよね、そこまでして人を好きになる理由」


一度も人を好きになったことがない。

好きだという感情すらわからない。

他の人は涙を流すような映画を見ても、私は心が少しも動かないのよ。


「真尋はある?人を好きになったこと」


エンドロールが終わり、メインメニューに切り替わる。スピーカーから流れるメインテーマが耳障りで仕方ない。


「……俺には必要ないから、そういうの」


吐き捨てるように言った真尋は、テーブルの上に置いてあったコップを手に取って呷った。

必要ない……かぁ。


「でも、彼女いたことはあったでしょ?」

「……まぁ」

「十中八九、告白は相手からよね?必要ないのに、なんで傍にいることを赦したの?」


我ながら面倒くさい質問だわ。

ハハ、と心の中で自分を嗤う。

こんな質問に真面目に答えるような男じゃないわよね、真尋は。


「やっぱナシ。答えなくて──」

「億劫だったから」

「……え?」
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