それを愛と呼ぶのなら
答えが返ってくるとは夢にも思わなくて、思わず耳を疑った。

今、なんて……


「億劫だったんだよ。拒むのも、また告白で呼び出されるのも。だから、傍に置いて利用しようとした。……赦した理由はそれだけだ」


真尋の声を聞いて、少しだけ背筋に汗が流れた。荒げるでもない。ただ冷たく、低い声。

まるで、かつて傍にいた、私にとっては顔も知らない女を、心底嫌っているような。


「愛が何なのかとか、俺だってわかんねえよ。知りたいって思ってた時期もあった。俺の傍にいることを望んだ女と寝れば……何かがわかるかも、って思ってた時もあった」

「真尋……」

「……お前は?男いたこと、あるだろ?」


一瞬心が垣間見えたと思ったのに、すぐに話を逸らされた。

ふん、真尋はいつだってこういう男よ。


「私も同じ。告白されて、何となく付き合って。それでも、一緒にいれば好きって気持ちも芽生えてくるだろうって思ってた」

「……」

「でも駄目ね。私にはやっぱり向いてないのよ、そういうの。触れることを赦して、一緒に堕ちた気分になっても、やっぱり私は独りだった」
< 76 / 165 >

この作品をシェア

pagetop