それを愛と呼ぶのなら
誰ひとり、傍にいて心安らぐ人はいなかった。


「……昔から、うちはバラバラだったの。物心ついたときからお父さんはほとんど家にいなかったし、お母さんも頻繁に家を空けてたしね」


その理由が、真尋のお父さんだったかどうかはわからない。

だけど、職場で出会ったお父さんと結婚して家庭に入ったお母さんが、あんなに粧し込んで出掛ける理由としては、十分だと思う。


「小学校の時の日曜参観もね、お父さんとお母さん、ふたり揃って来たことないの。……ううん、日曜参観だけじゃない。思い返してみれば、式典も全部そうだわ」

「……」

「よく考えればそうよね……。愛されたことないんだもの。愛し方なんてわかるわけないじゃない……」


何処か遠くで、バリバリと雷が鳴っている。

この雷、お母さん達には届いてないよね。

雨も、風も、幼い頃の私の寂しさも。


「なんでなんだろうね……」

「……ん?」
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