それを愛と呼ぶのなら
謝らなくていいって私が言ったから。彼は悪くないのに、ごめん以外の言葉が見つからなかったんだろう。

残酷な優しさに、我慢していた涙が次々と頬を伝った。


「……っ」


ねぇお母さん。

いつから?誰と?お父さんは?


色んな疑問が頭の中で渦巻いて、ぐちゃぐちゃになる。


「……っう」


こんなにつらいことがあるんだ、ってくらい胸が締め付けられて、苦しい。


「……真尋、さん」

『……』

「私……どうすればいい……?」


お母さんが不倫をしてることを知って尚、“家族”でいられる自信なんてこれっぽっちもない。

だけど、ひとりじゃどうすることもできないよ。


『……お前の家、どこ』

「……え」

『今から行く。場所教えろ』


唐突な、有無を言わせない言い方に戸惑いこそしたけど、全然嫌じゃなかった。


『──区のコンビニの裏だな。すぐ行くから、待ってろ』


バイクのエンジン音と共に切られた電話。
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