それを愛と呼ぶのなら
私は知ってる。

真尋がほんとは意地悪なこと。だけど絶対に優しさもくれること。

その手の温もりも、柔らかく笑うその視線も。


「だってそうだろ?ハンバーグひとつではしゃぐようなお子様なんだから」

「なっ……!今になって馬鹿にする!?」

「馬鹿にしてるわけじゃねえよ」


ぐしゃぐしゃと、大きな手で頭を撫で回される。

ほら、こんな風に。真尋の意地悪には必ず優しさがついてくる。

そういうところ、私、嫌いじゃない。


「もっと早く、別の形で出会いたかったな……。真尋みたいに中身を見てくれる人に」


言うつもりのなかった言葉は、知らず識らずのうちに声になってしまっていた。

ハッとしてから真尋の顔を見上げると、案の定彼は切なそうに微笑んでいて。

違う。そんな顔をさせたいわけじゃないの。


「な……なんてね!冗談よ」


どうすることが正解だったのかはわからない。

だけど、ふたりの間に流れた微妙な空気を取っ払うには、こうするしか出来なかった。


鮮やかなグリーンの芝生に手をついて、すくっと立ち上がる。


「私、喉渇いちゃった。何か買ってくるけど、何かいる?」

「……うん、じゃあ、コーラ」

「了解」
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