それを愛と呼ぶのなら
来て、くれた……。


「汚い手で触んじゃねぇよ……!」


怒りに満ちた声が、力任せに投げられる。

その場に倒れこんだ男達を睨みつける目は、憎しみに満ち溢れていて。

こんな真尋、初めて見た……。


「ってぇ……」

「おまっ……何すんねん!」

「“何すんねん”はこっちの台詞。こいつに何しようとしてんだよ」


気づかぬうちに震えていた私の指先に真尋の手が一瞬触れて──だけど、その温もりはすぐに離れて行ってしまった。


「こいつは俺等みたいなやつが簡単に触れていい女じゃねぇんだよ!」


何……それ……。


今の言葉の意味を巧く理解出来ないまま、真尋に手を引かれてその場を離れる。

お互い何も喋らなかった。

ぐるぐる、同じ言葉が頭の中を駆け巡る。


“俺等”、って……何、なの……?


「まひっ……」


漸く声を絞り出した時、掴まれていた手が離された。

行き場を失った手が虚しく彷徨う。
< 90 / 165 >

この作品をシェア

pagetop