それを愛と呼ぶのなら
少しの間流れた息が詰まるほどの沈黙を、先に破ったのは真尋の方だった。


「……ごめん」


その謝罪に込められた真意を読み取ることなんて出来っこない。

何がごめん?何に対してそんな顔をするの?

遠い。真尋が遠いよ……。


「ううん……」


どんな言葉を返せばよかったのか。少なくとも、今の私にはそう言うのが精一杯だった。




その後も、微妙な空気は流れ続けた。

お互いにいつも通りを装うけど、どこかぎくしゃくして。我慢出来なくなって、先を歩く真尋に手を伸ばしかけて──すぐにその手を引っ込めた。

さっきの真尋の言葉と私達の曖昧な関係が、それを赦さなかったんだ。


「……腹減ったな」

「……そうね」

「どっかのレストラン入るか」

「うん」


パーク内のマップを開け、ふたり同時に覗き込む。

すぐそこに真尋の顔があって、うまく言えないけど……息苦しくなった。
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