それを愛と呼ぶのなら
「リクエスト受け付け中」

「リクエストっつったって……お前の飯、なんでも美味いからなぁ」

「……褒めても何も出ないわよ」


照れ隠しに睨んでみせるけど、真尋には全部お見通しだったみたいだ。

なんでも美味い、か。

真尋がくれた言葉を反芻すると、胸の奥がほっこりと暖かくなる。

自分の得意なことを褒めてもらえるのって、嬉しいんだなぁ……。




スーパーで買い物をして、マンションに帰る。

真尋のリクエストは、お鍋だった。野菜も食べられて手軽にできることから選んだんだろう。

夏に食べるお鍋もありよね。


「鍋敷き買ってきてあるよね?」

「あぁ。もう出来た?」

「うん。今から持ってく」


ミトンを両手にはめながら答えると、キッチンに真尋が現れた。

何も言わずに私の手からミトンを取り上げ、自分の手に着ける。


「ちょ……真尋?」

「危ねえから退いてろ」


ぶっきらぼうにそう言って、真尋はお鍋をテーブルへと運んでいった。
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