紳士的な狼の求愛

年が明け、1月。
展示会。
広い会場に、メーカーやベンダーのブースが並んでいて、流通各社のバイヤーがそこを回っていく。

私は部長と一緒に有馬くんの会社のブースに来た。

……いた。

相変わらず人目をひくタイプだから、有馬くんの姿はすぐに見つかった。

だけど。
隣に、同僚らしき女の子。
憧れと思慕が混じった目で、有馬くんを見つめている。
有馬くんの彼女を見る目は優しくて。

うちの会社に社内恋愛があるのと同じで、彼の会社にもあるのは当たり前で。

胸がギリギリ締め上げられる。

……うわ。まいったな。
久々のこの感情。


と。女の子が離れていき、有馬くんが私に気づいて、

ニコっと、笑ってくれた。


意識がまるごと持って行かれそうになるのに、慌ててブレーキをかける。

……危なかった……。


私達に気づいた営業の原田君が飛んできた。
部長にぺこぺこし、ブースへと案内する。
私も後に続く。

有馬くんが部長に挨拶し説明を始めると、今度はその声が私の胸をさかんにノックする。


……まいったな……。



< 12 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop