紳士的な狼の求愛
年が明け、1月。
展示会。
広い会場に、メーカーやベンダーのブースが並んでいて、流通各社のバイヤーがそこを回っていく。
私は部長と一緒に有馬くんの会社のブースに来た。
……いた。
相変わらず人目をひくタイプだから、有馬くんの姿はすぐに見つかった。
だけど。
隣に、同僚らしき女の子。
憧れと思慕が混じった目で、有馬くんを見つめている。
有馬くんの彼女を見る目は優しくて。
うちの会社に社内恋愛があるのと同じで、彼の会社にもあるのは当たり前で。
胸がギリギリ締め上げられる。
……うわ。まいったな。
久々のこの感情。
と。女の子が離れていき、有馬くんが私に気づいて、
ニコっと、笑ってくれた。
意識がまるごと持って行かれそうになるのに、慌ててブレーキをかける。
……危なかった……。
私達に気づいた営業の原田君が飛んできた。
部長にぺこぺこし、ブースへと案内する。
私も後に続く。
有馬くんが部長に挨拶し説明を始めると、今度はその声が私の胸をさかんにノックする。
……まいったな……。