紳士的な狼の求愛
誰もいないロビーで2人、原田君を待つ。
有馬くんが私をじっと見ている。
また、あの、男の人の目で。
ただ、今日は以前よりも熱さが増していて。
しかも、いつもの明るい雰囲気ではなく、私は動揺していた。
「原田が、青山さんから担当変更の電話を受けた後、俺のところに飛んできた」
……原田君! 君は!
「俺はいつ青山さんから連絡くるのかなって、この一週間電話握りしめて待ってた」
……拗ねてる?
怒ってる、ではなく、拗ねてるっていうのが有馬くんらしい。
「……連絡、しようとは思ったのよ……」
「ほんと?」
「本当」
「じゃ、許す」
有馬くんは、あっけらかんと機嫌を直した。
「俺もツメが甘かった。青山さんから連絡して、って言ってなかったもんな。
で、今日俺が来た理由、わかってるだろ?」
「……ここ、会社ですから、そのフランクな口調はいかがなものかと思いますが」
「これは失礼。あまりにも嬉しくて舞い上がってしまいました。
では、予約しておいた権利、行使します。この後一緒に食事に行っていただけますか?」