紳士的な狼の求愛
彼氏がいたら、2人きりで食事しません


「まだ、フリー?」

パスタ屋さんの席に着くと、有馬くんが言った。

「彼氏がいたら、他の男性と2人きりで食事しません」

憮然として答えると、有馬くんは
「おー。やっと、青山さんの固さが俺に味方する時が来た」
なんて言いながら笑った。

……笑顔に、意識がまるごと持っていかれる。

「青山さん、奢るから遠慮せず飲んでいいよ」

「車ですから」

あなたをここまで乗せてきましたよね?

「俺が運転してやるよ」

「保険きかないのでやめてください」

「そっか。じゃ、俺飲んでいい?」

「どうぞ」



有馬くんはグラスワインを一口飲むと、ハッと気づいたように言った。

「あ、俺、今日、御社まで車で来たんだった」

……こ、こ、この男!

「では車の中で寝てください」

「青山さんは明日の土曜日は休み?」

さらっと流したな?

……ちなみに、休みだけど。

「俺も休み」



有馬くんは、パスタを綺麗に食べる。
グラスを持つ手も、フォークを持つ手も、美しくて。

一度だけ重ねられた手の温もりを思い出し、鼓動が速くなる。

もう一度、触れられたい、と思ってしまう自分に、動揺する。


……会ったら、やられると思ったのは、間違いじゃなかった。




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