紳士的な狼の求愛
食べていいよ
明らかに私を口説いてきてる男の人を家に上げるとか、私どうかしてる。
いつの間にか、カーペットに座る私の隣にぴったりくっつかれてるし。
触れ合う腕が、熱い。
空気は、とろん、と私達を包んでいる。
こんな空気、何年ぶりだろう。
「俺、再会できたこと、運命だと思ってるから。まじで」
有馬くんの頬が、私の頭に触れる。
……たぶん、キスしたいと思ってるんだろう。
私さえ、有馬くんの方を向けばいい話で。
でもそれは、これから先の始まりに対する同意で。
此の期に及んで、私は腰が引けていた。
有馬くんはきっとそんな私を見抜いているに違いない。
押してきた。
「玲子のことがもっと知りたい。
俺のことも知ってほしい」
……魅惑的な言葉と声色に、
ぐらっときた。
でも。
心の中にある、取引先とは付き合わない、というポリシーが、最後の抵抗をする。
……本当にいいんだろうか。
彼に、周りに、迷惑はかからないんだろうか。
今ならまだ、引き返せる。
身体は固まり、動かない。