紳士的な狼の求愛
「展示会に来てもらった時にね……」
『有馬君さえよければ、うちの青山、どうだい?』
『いいんですか? 本気にしますよ』
『おーおー。本気にしていいぞ。落とせれば、だがな。あいつ、手強いぞー?』
『ええ。わかります』
『面白いプレゼンのお礼に、とっておきのカードをあげよう。最後の切り札にとっとけよ?』
『はい』
『オレの許可は得てる、って言ってみろ』
という会話があったらしい……。
信じられない、あの狸親父……。
まさか今回の人事は、と疑いたくなる。
有馬くんは真剣な表情で私を見つめる。
「お互いの会社に迷惑はかけない、節度のある付き合いをしていく。約束する」
そして、微笑んで、私に向かって腕を広げた。
「というわけで。はい。心置きなく、どうぞ」
……どうぞって、何それ。
「押し倒すのかなり我慢してるから、早めに落ちてくれると助かる」
……そんな、待ち構えられると……。
「……紳士なんだか、狼なんだか」
思わず呟くと。
有馬くんは、
「紳士的な狼です」
と言って笑った。
「だって、青山さんが納得していないのに無理矢理したら、きっと一晩で逃げられるだろ? 俺が欲しいのは、青山さんの心も含めた、全部」
……優しいのか、腹黒いのか……。