紳士的な狼の求愛
「青山さんが、心も身体も俺に食べられたいと決心したら、飛び込んでおいで」
戸惑う私に対して、有馬くんは次々と手を打ってくる。
「んー、胸に飛び込むのは、さすがにハードル高いか。じゃ、はい」
有馬くんは私に片手を差し出した。
手の平を上に向けて。
王子様みたいに。
そして一転、雰囲気を変えて。
ビジネスで相手に決断を迫る、押しの一手を繰り出す時のような気迫と、
魅惑的な視線と、
甘い声で、
言った。
ーーー「おいで、玲子」
……もう、だめだ。
この恋を失ったら立ち直れないかもしれないけど、
このチャンスを逃したら、きっと一生後悔する。
どうなってもいいから、今、この手を取りたい。
私は、ゆっくりと、有馬くんの手に、自分の手を乗せた。
瞬間。
腰からさらわれ、抱きすくめられていた。
「つかまえた」
有馬くんの体温に包まれると、必死にブレーキをかけていた心が解き放たれ、すごくほっとしてる自分がいた。