どうしても言えない言葉
「なぁ、もうすぐだな」
今も目の前で大澤くんを見つめている彼が呟いた。
「んー?なにがー?」
真緒は携帯を弄りながら聞いてみる。
「なにが?じゃねーよ!高校で一番のイベントだろ!」
真緒は携帯を弄っていた手を止め、健太郎を見つめた。
「修学旅行だよ!修学旅行!!」
健太郎は真緒に顔を近づける。
「ちょ、ち、近い!近いから!」
真緒は顔の熱を冷まそうと、手で顔を扇いだ。
「お、ごめんごめん」
真緒はため息をつき、頭を振った。
「で、修学旅行ってまだ先だよ?今何月だと思ってるの?」
そう、今はまだ五月だ。
どちらかというと、体育祭のほうが近い。
「いやいや、お前。そろそろグループとか決めるだろ?」
「え、そうだっけ?まぁ、私は夏子と一緒ならなんでもいいや」
相田は呆れたように真緒を見る。
「おまえなぁ……。これはチャンスだろ」
相田は目を輝かせている。
「大澤くんに近づくための?」
真緒は相田を見つめる。
あんなにチャンスだなんだと言っていたのに、いざ言葉にされると照れる。
そんな相田に、真緒はまた好きになってしまっていた。