僕が君の愛
※※※※※※
「お好みのものはありますか?」
化粧室から戻った加織に、犬養が尋ねる。本日のメインである葉巻を注文しようとしていたのだ。質問に、加織は小さく首を振ってみせる。加織の髪が動きに合わせ揺れ、甘い香りを犬養に届けた。加織の笑顔につられ、犬養も笑顔を見せる。
「お店の方に任せているんです、いつも」
「そうですか。でしたら、僕もそれに倣おうかな。今日は」
片手を上げ、犬養が声を上げる。素早く反応を見せたのは、カウンター内に居た肇であった。目の前の客に席を外すことを断り、優雅な動きで犬養の元へと歩み寄る。
「お呼びでしょうか」
低く甘い声。肇が立つ、加織の身体の右側が、柔らかく、軽い愛撫を受けたような感触に陥っていた。錯覚だ。これは、肇の営業スタイルなのである。惑わされるな……と、加織は心の中で自身に言い聞かせる。
「今日は彼女とふたりで来店できた特別な日なので……。そんな日にあった上品で上等なな葉巻をお勧めしてもらえますか?」
犬養の言葉に、加織は一瞬笑顔を忘れる。どういう意図で口にしたのか、犬養の真意は分からない。『特別』と言う言葉。明らかに、加織に対する好意的な態度の現れだろうが。
犬養とて大人な男性なのである。加織と犬養との男女の駆け引きは既に始まっている。間を置くことなく。加織は再び優雅な笑みを浮かべた。
肇が小さく頷き、口を開く。
「普段はどういったモノをお好みでしょうか?」
「そうですね……キューバ産がメインです。手頃なアップマンなんかを」
「でしたら。本日はダビドフなどいかがでしょう?繊細で上品なモノが多いですが」
「ダビドフか。いいですね、僕はそれでお願いします」
「かしこまりました」
肇が頭を下げ、その場を去ろうとしたのを。犬養が引き止める。
「僕だけじゃないんだ、彼女にも葉巻をお願いします」
「お好みのものはありますか?」
化粧室から戻った加織に、犬養が尋ねる。本日のメインである葉巻を注文しようとしていたのだ。質問に、加織は小さく首を振ってみせる。加織の髪が動きに合わせ揺れ、甘い香りを犬養に届けた。加織の笑顔につられ、犬養も笑顔を見せる。
「お店の方に任せているんです、いつも」
「そうですか。でしたら、僕もそれに倣おうかな。今日は」
片手を上げ、犬養が声を上げる。素早く反応を見せたのは、カウンター内に居た肇であった。目の前の客に席を外すことを断り、優雅な動きで犬養の元へと歩み寄る。
「お呼びでしょうか」
低く甘い声。肇が立つ、加織の身体の右側が、柔らかく、軽い愛撫を受けたような感触に陥っていた。錯覚だ。これは、肇の営業スタイルなのである。惑わされるな……と、加織は心の中で自身に言い聞かせる。
「今日は彼女とふたりで来店できた特別な日なので……。そんな日にあった上品で上等なな葉巻をお勧めしてもらえますか?」
犬養の言葉に、加織は一瞬笑顔を忘れる。どういう意図で口にしたのか、犬養の真意は分からない。『特別』と言う言葉。明らかに、加織に対する好意的な態度の現れだろうが。
犬養とて大人な男性なのである。加織と犬養との男女の駆け引きは既に始まっている。間を置くことなく。加織は再び優雅な笑みを浮かべた。
肇が小さく頷き、口を開く。
「普段はどういったモノをお好みでしょうか?」
「そうですね……キューバ産がメインです。手頃なアップマンなんかを」
「でしたら。本日はダビドフなどいかがでしょう?繊細で上品なモノが多いですが」
「ダビドフか。いいですね、僕はそれでお願いします」
「かしこまりました」
肇が頭を下げ、その場を去ろうとしたのを。犬養が引き止める。
「僕だけじゃないんだ、彼女にも葉巻をお願いします」