僕が君の愛
小さくとも、カラフルな硝子で彩られた窓と、烏のプレートが付いている木製のドアを押し開ける。暖かい空気を全身に感じながら、加織は身体を滑り込ませた。淡い橙色の明かりで照らされている店内へと。
ここは、4人掛けのテーブル席が3つ、それにカウンター席が4席。更に2階にもテーブル席が1つある小さなシガーバー。
カウンター内に、既に顔馴染みとなったオーナーの姿が見える。店内には、テーブル席に3人組の客がいるだけだ。まだ開店直後というせいもあるのだろう。時間帯によっては満席の時もあるのだから。
加織は、すでに自身の指定席となっているカウンターの一番奥へと足を進めた。椅子に腰を掛けたタイミングで、オーナーが加織の目の前へとやってくる。
「加織さん、いらっしゃい。この時間に来たってことは……。今日は仕事帰りかい?」
「そうです。もう、お腹ペコペコで。おまかせで何か美味しいもの食べさせてください、肇さん」
オーナーこと烏丸 肇《からすま はじめ》は、加織の前にコースターと冷えた炭酸レモン水を置く。眸を少しだけ細めて頷き、キッチンのあるカウンター奥へと姿を消した。
本来ならば。ここで提供される食事を担当しているスタッフが1名いるのだが。開店直後は出勤していないことが多い。不在中に受けた注文は、肇自ら手がけていた。
肇の背中を目で追いながら、加織は小さく溜め息をもらす。