Tender Liar
第6章


  融へ。


  もし今、あなたに逢えるのだとしたら。
  伝えたいことが、たくさんあります。

  どうして、一人で行っちゃうの?
  どうしていつも、私一人だけ、
  置いていくの?

  あの時のことは、あの時に話してよ。
  今さら聞かされたって
  私が返事をするべき相手は、
  融は、もういないじゃない。

  いつもいつも、一人で抱え込んで
  私には、何にも相談しないで
  病気とも、ずっと一人で闘ってたんだね。
  そんなに頑張らなくても良かったのに。

  私はいつでも、そしてこれからも、
  ずっとずっと、融と二人で
  歩いていきたかったのに。

  それなのにさ。
  どうして、私を残していくかな。

  私がどれだけあなたに好きと言ったって、
  俺もだよ、と返してくれる口も、
  そっと抱きしめてくれる腕も、
  ここには、もうないの。

  あるのは、あなたのくれたリングだけ。
  だけどそれは、あなたではないでしょう?

  どれだけ想いが詰まっていても、
  あなたがいなければ意味がない。

  見る度に思い出して、切なくなるのに。
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