ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。


とっさに背中に腕をまわせば、胸板は思った以上に分厚くて〝あぁ男だなぁ……〟なんて、地面に倒れ込みながら思っていた。

……だめだだめだ。何を考えてるんだ私! ちょっと顔が格好いいからって!

自分ひとり意識してしまったことに恥ずかしくなって顔が火照る。雑念を振り払うように段ボールの中身へと手を伸ばした。



前に暮らしていたところから持ってきた数少ない荷物の中から、高校の卒業アルバムを手にしたとき。そっと隣に春海さんが座り込んだ。



「それ、ひなちゃんが高校のときの?」

「えぇ」

「見たい」

「え……嫌ですよ!」

「お願い」

「……」



笑ってはいるけれど、春海さんの目はどこか真剣だった。私は口を真一文字に結んでたじろぐ。

私がまだ渋っていると、春海さんはずいと覗きこむ顔を近づけてきた。



「ほら、組み立てのお礼に」

「っ……さっき要らないって言ったくせに」

「してもらってばっかりは駄目だってさっきひなちゃんが言ったんだよ?」

「……」

「義理堅い子は大好きだ」



……あなたが大好きだからってなんなんです!

そう叫びたい気持ちでいっぱいだった。もうやだこの人ものすごくちゃっかりしてる……! 自分の顔がいいことわかりきって顔近づけてくるタチが悪い……!

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