ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。


「今日は何? 愛妻弁当? モーニングコール? どんな尽くされ方してきたのよ一体!」

「楽しそうですね鍋島さん……」

「羨ましいの! なんなの毎日尽くしてくれるイケメン管理人さんって……。そんオプションがついてるなら私もすぐにそこに引っ越すわよ……」

「鍋島さん旦那さんいるじゃないですか」

「瀬尾さんだって彼氏いるでしょー? いいじゃない、恋愛にはならなくたって。尽くしてもらうだけでどれだけ仕事と家事で疲れた心の保養になるか……」



はぁ、とため息をついて見せてた鍋島さんは、始業のチャイムが鳴ると「はっ、仕事!」と切り替えておしゃべりをやめた。少しきゃぴっとしたところはあるけれど、初対面のときからイメージが変わらず"きちんとした人"である彼女のことが私は好きだ。
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