ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。
春、
私の腕の中に男の人が降ってきた。
「…………えぇっ!?」
「!? 危なっ…………避けろ!」
避けろと言われても!
突然のことにわけもわからず、両手を広げて受け止めようとした。
けれど降ってきたのは男の人。
「避けろ」と叫んだその人は目を見張って頭から降ってきた。
マンションの二階から、階段の下の私に向かって降ってきた。
自分より一回りも二回りも大きい存在を受け止めきれるはずがない。
それなのに腕を伸ばしていた。
――スローモーションで降ってくる。
柔らかな黒髪と、落ちてしまった焦りと驚きで見開いている澄んだ瞳が目に焼き付く。
彼を、腕の中にしっかり抱きとめた、と思った。
……直後。ずしんと全身に衝撃が走って、私はその場にひっくり返る。
「……っ……いたた……」
「っ、怪我は!?」
ぐいっと腕を引っ張られて体を起こされた。
私はまだ衝撃でバクバクと心臓が鳴るので、すぐには言葉が出てこずに。ただじっと、自分の上に落ちてきた彼の顔を見る。柔らかそうな黒髪と澄んだ瞳。綺麗な顔のその人は、〝生きた心地がしない〟という表情で私の顔を覗きこんでいて。
……格好いいなぁ。
はっきりした目鼻立ちとバランスの取れた顔のパーツについ魅入ってしまう。