ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。
喉の奥が冷たい。心臓も冷たくなっていくような寒気に襲われる。プレゼントを持つ手に力が入ってしまって、くしゃっと箱の形を歪めてしまう。
私の質問を無視して好き勝手話していた父は、はぁ、と深いため息をついて経済紙を畳んだ。その間にも嫌な予感が止まらなかった。
――なんで父がこの待ち合わせ場所を知っているのか?
今朝の新田さんの電話を聞かれただろうか。どうやって? 盗聴でもされてたかな。ありえなくはない。だとしたら最低だけど。
他の可能性は? 昨日、資料室に二人でいるところを誰かに見られたとか……。目撃した誰かが、秘書の逢瀬を社長に報告した。それで私と新田さんとの関係がバレてしまった。うん、これもありえる話だ。問い詰められた新田さんが今日のことをしゃべってしまったとして、それは仕方がない。
……仕方がない。
言い聞かせて一度ぎゅっと目を閉じる。冷たい熱が眉間の奥を流れていく感覚。自分が意図的に考えないようにしている可能性には、もう気づいている。
父の次の一言で確信した。
「恋愛ごっこは楽しかったか?」