ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。
「……」
何を思っていいのかわからなかった。
五年前に告白したときに、『隠し通せますか?』と聞いた新田さんは別に、私のことを好きでもなんでもなくて。
ただ「好きなようにさせておけ」と父が言ったから、断るようなこともしなかった。
「……っ」
じゃあなんでキスとか、それ以上とか。
いまだに立ったままでいる私を、父は怪訝そうに見た。その目は鋭くて、母の尻に敷かれていた頃の面影はない。
「もう自由な恋愛はいいだろう。婚約者にも今度こそ会ってもらう」
「……自由?」
こんなにガチガチに固められた箱の中で泳がされていたような恋のことを、自由だと父は言う。視界が黒ずんでいくような気がした。
「……ねぇ」
「ん?」
「私、お父さんにここまでされるようなことしたかな……?」
「……」
声は震えていたかもしれない。