ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

鍵を開けて自分の部屋の中に入る。パンプスを脱いで、電気を点けて。ラグマットの上にバッグを下ろす。ヌメ色の皮のトートバッグが自立できずに倒れて、中から私が少しくしゃっとしてしまったプレゼントが出てきた。



「……」



そっと拾い上げる。

昨日渡せずにいたら、もう一生渡せなくなってしまった。



「……やめよう」



感傷的になるのは。一人の部屋でメソメソ泣くのも嫌だ。そう思ってプレゼントは包装用紙に包んだままゴミ箱へ。放った瞬間にチクッと胸が痛んで、“これゴミを出すときにまた同じ気持ちになるんだろうなぁ”と予感しながらゴミ箱から目を背けた。

シャワーを浴びよう。お湯が溜まるのを待つ元気もないから、ささっと浴びて早く寝ちゃおう。ジッパーを下げてすとんと床に落ちたスカートを跨いで、私は浴室へ向かった。





「……あれ?」



裸になってシャワーを浴びようとしていた。サーッとシャワーを手のひらにあてて温度を確認していたが、シャワーはいつまでも水のまま。一向にお湯になる気配がない。



「んん……?」
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