花京院家の愛玩人形

チェアに座り、ヘッドセットを装着して。

『あー…』とかボヤきながらソレを外し、キャビネットからゴソゴソとスピーカーフォンを取って接続し直して。


「何をなさっておられるの?」


「スカイプ。
家族を紹介するって言ったでショ?
イヤなコトからさっさと済ませてしまおう」


すか… すかい…?? なんなのか。
イヤなコトって、なんなのか。

よくわからないまでも邪魔はすまいと、紫信が黙って見守っていると…


「Ti amo,tesoro mio!!」


PC画面に映し出された中年男が、やけにハイテンションで叫んだ。

目尻の皺さえ魅力的な、彫りの深い顔立ち。

丁寧に整えられた、清潔感のある囲み髭。

真っ赤なパジャマと、同色の三角ナイトキャップという素っ頓狂な装いに目を瞑れば、いかにも女性にモテそうなダンディズム満載のオジサマだ。

その陽気なダンディに、眉間に皺を刻んだ要がボソボソという。


「いい加減にしてください、お父さん。
ここまで育った息子に、『愛してるよ、私の宝物』はないでしょう」


眉間に皺を刻んだ要に、陽気なダンディが情熱的に言う。


「幾つになろうと我が子は宝さっ!
要くぅぅぅん!
あーいーしーてーるぅぅぅぅぅ!!」


え?親子なの?

この、色々と対照的な二人が?

父と息子なの?

< 100 / 210 >

この作品をシェア

pagetop