花京院家の愛玩人形
チェアに座り、ヘッドセットを装着して。
『あー…』とかボヤきながらソレを外し、キャビネットからゴソゴソとスピーカーフォンを取って接続し直して。
「何をなさっておられるの?」
「スカイプ。
家族を紹介するって言ったでショ?
イヤなコトからさっさと済ませてしまおう」
すか… すかい…?? なんなのか。
イヤなコトって、なんなのか。
よくわからないまでも邪魔はすまいと、紫信が黙って見守っていると…
「Ti amo,tesoro mio!!」
PC画面に映し出された中年男が、やけにハイテンションで叫んだ。
目尻の皺さえ魅力的な、彫りの深い顔立ち。
丁寧に整えられた、清潔感のある囲み髭。
真っ赤なパジャマと、同色の三角ナイトキャップという素っ頓狂な装いに目を瞑れば、いかにも女性にモテそうなダンディズム満載のオジサマだ。
その陽気なダンディに、眉間に皺を刻んだ要がボソボソという。
「いい加減にしてください、お父さん。
ここまで育った息子に、『愛してるよ、私の宝物』はないでしょう」
眉間に皺を刻んだ要に、陽気なダンディが情熱的に言う。
「幾つになろうと我が子は宝さっ!
要くぅぅぅん!
あーいーしーてーるぅぅぅぅぅ!!」
え?親子なの?
この、色々と対照的な二人が?
父と息子なの?