花京院家の愛玩人形
すると、ノロノロと持ち上がった大きな手が、肩に乗せられた細い指先に癒しを求めるように重なる。
「わかってる。
彼は心から息子を愛する、いい父親だ。
ディーラーやブローカーのみならず、真贋を見極めるバイヤーとしての目も確かで、信頼と尊敬に値する業界人でもある。
事実、僕が娘を任せられるのは彼だけだ」
「えぇ…」
「でも…
ど─────しても!あのノリに耐えられず、僕は人形作家デビューを機に、彼の反対を押し切って一人で生家に戻ってきたンだ…」
「えぇ…」
「時を選ばない、あのハイテンション…
人目を憚らない、あの海外テイストのスキンシップ…
嫌がる人間までも巻き込む、あのパリピ体質…
多感な年頃になった僕には、ど───しても!ど─────しても!!ついていけなかった…」
「なんというか…
お察ししますわ…」
紫信は同情を込めて首を左右に振った。
二度目だよね、コレ。
わかるよ。
人間性が真逆なコトも。
髭ダンディの愛情表現は、思春期日本男児には『キモい』の一言で表されてしまう要素が満載なコトも。
キライなワケじゃないンだケド、ね。
息子と父親の関係も、非常に繊細だ。
「ふ─────…
一番厄介な家族紹介は終わったし…
次に行こうか?」
深すぎる溜め息を吐いて立ち上がった要は、死人の顔で紫信を振り返った。