花京院家の愛玩人形

お尻にちょんとついた丸い尻尾は、萌え要素以外のナニモノでもありませんケドね。


「彼も君に抱いてほしいと思っているだろうケド、もうケースからは出してあげられないな。
ずっと連れ歩いてたから、所々壊れかけているンだ」


「治して差し上げませんの?」


「んー… ソレも考えたンだケド。
ご覧?ココとか、ココとか…
作りが粗いし、拙いだろう?
耳なんて、接着剤で補強してたりもするし。
それでも、あの頃の僕の全てを注いだ友人だ。
今の僕が手を加えるのは、間違っている気がしてね」


「そう…
愛して、おられますのね」


いつの間にか膝立ちになり、ピグマリオンさんと目線を合わせて語る要を見つめ、紫信は唇に笑みを浮かべた。

そして、しとやかな動作で椅子に腰を下ろし、ゆっくりと部屋中を見回す。

全ての人形たちに挨拶をするように。


「要はココに座って、いつも何をしておられますの?」


「娘たちの髪の手入れをしたり、本を読み聞かせたり、後、とりとめもない話を…
一方的に、だケド」


「そうですの…
ねェ、要?
わたくし、お願いがあるのですけれど」


「よし、聞こう。
どんなコトでも」


要は床に膝をついたままクルリと方向転換し、紫信の華奢な手を取って握りしめた。

おいおい…

跪いちゃってンじゃねーか。

< 112 / 210 >

この作品をシェア

pagetop