花京院家の愛玩人形
Ⅳ
時は移ろい、暗い曇天に紫陽花の花が映える季節。
いつも通り登校し、いつも通り退屈な授業をこなし、いつも通り家路につくはずだったある雨の日の放課後、高台に建つ某私立高校は隕石落下級の衝撃に包まれた。
理由は、ハイ、コレ。
校門の前に、ドーリィフェイスの完璧な美少女が立っていたから。
ナニが完璧って?
いや、全部。
全部が完璧だから、『完璧』っつーンだよ。
湿気なんてものともしない、艶やかに波打つ栗色の髪も。
全力で守りたくなるような。
でも、たまにイジワルして泣かせたくもなるような、儚げで愛らしい容姿も。
白いハイネックブラウスと紺のスカート、同じく紺のパンプスという清楚な服装も。
まるで作り物のように、トータルで完璧。
そしてそのドーリィ美少女が、紫陽花色の傘を揺らして…
なんと!?
校舎から出てきた、学校一地味で空気な男、花京院 要に可憐な笑顔で会釈したからぁぁぁぁぁ!!??
帰ることも忘れて、彼女をガン見していた生徒たち。
部活に行くことも忘れて、彼女をガン見していた生徒たち。
部外者の来校を注意することも忘れて、彼女をガン見していた教師たちですら。
その場に居合わせた全員が、落雷による感電レベルで身を震わせた。
二人の会話もね?
こんなんデスヨ。
「どうしたの?」
「お買い物の帰りに、通りがかりまして」
「わざわざ坂を登って?」