花京院家の愛玩人形
Ⅴ
「花京院くんって美化委員だよね?
私もなの。
委員会、一緒に行こう?」
教室の窓際最後尾の席で黙々とスクバにテキストを詰める要に、ユイは声をかけた。
学期初めに、サボれると踏んで適当に立候補した地味な委員だったが、こんなカタチで功を奏するとは。
男女ペアで同じ委員。
スイーツ(笑)あるあるな接点じゃん。
しかも委員活動が活発になる年に一度の美化月間がまさに今とか、神が味方したとしか思えない。
「…誰?」
目も合わさずに要は問い返す。
名前も知らねェのかよ、コノヤロー。
だが、まぁいい。
『出逢い』は始まった。
二人が恋に落ちるまでの流れが始まった。
「ユイだよォ。
今まで委員会に参加できなくて、ごめんね?
予備校とか忙しくってェ」
多くの男を虜にしてきた甘ったれた口調で詫び、ユイは拳で頭をコツンする。
だけど…
「あ、そう」
要は素っ気なく言って立ち上がり、スタスタと教室の引き戸に向かってしまった。
あれ?
流れ、ブった切ったカンジ?
むしろナニも始まってないカンジ?
てか、キラキラ女子のモテ仕草で、頬を染めないどころか眉一筋動かさないとは…
あのドーリィ美少女がいるからか?
こんなん慣れっこってか?