花京院家の愛玩人形
なぜだ?
なぜナニも始まらない?
あのドーリィ美少女がそんなにイイのか?
いやいや。
たとえカノジョが大好きでも、カワイイ女子に迫られればちょっとはデレるもんだろ。
2.5次元のフィギュアに慣れすぎて、3D酔いしてンのか?
いやいや。
3D酔いって、そーゆーンじゃねェだろ。
「あー…
委員会に遅れるし。
僕、もう行くから」
なんてボソボソと言って、要は茫然とするユイを残して大股で歩き出す。
おーい!?
一緒に行こって言ったじゃん!?
言ってなくても、目的地が同じなら、一緒に行くのが自然じゃん!?
ほんっと、なぜだ!?
いつもなら、ナニカが始まる予感どころか本編になだれ込んでるハズなのに!?
非リア男にこんなに手こずるなんて…
(…
フフン。
それでこそ、手に入れ甲斐があるってモンよ)
ユイは茶色に染めたセミロングの髪を片手で背に流し、不敵に口角を持ち上げた。
これくらいじゃ折れない。
心に輝く勲章の数は伊達じゃない。
絶対に落としてやるンだから!
「待ってよォ!
花京院くんったら、酷ぉいィ!」
短いスカートを翻したユイが、要の広い背中を再び追い始めたその同じ頃…