花京院家の愛玩人形
細い雨が降り続く窓の外に、人影はない。
時間はまだある。
長期戦に備え、コージは紫信の隣の席に腰を下ろした。
もちろん彼女のほうを向いて。
足を組み、肘をついた机にしどけなく寄りかかって。
「名前は?
花京院との関係は?」
「どうしてそのようなことを?」
「君に興味があるから。
ねェ、教えてよ」
どう?コレ。
決定的ではないが、明らかな好意が見え隠れしてて。
『まさかこのイケメン、私のコトを?』的甘い予感にドキっとしちゃうだろ?
「わたくしは、あの方のお人形ですわ」
「‥‥‥‥‥ハイ?」
あれェェェェェ!?
前言撤回ィィィィィ!?
逆にドキっとさせられたぁぁぁぁぁ!?
表情も変えずに本を読んだまま、なんて禁断チックなコト言っちゃってンの?このコ。
「ちょ… ソレってどーゆー意味?
てか、どーゆープレイ?」
「プレイ?
何をお聞きになりたいのかよくわかりませんが、そのままの意味ですわ。
わたくしたちがどのような間柄だと確認し合ったことも、どのような間柄になろうと約束を交わしたこともございませんもの。
仮初めに人の肉体を得たとは言え、わたくしはあの方に愛でられるお人形なのですわ」